新学術領域「生物ナビゲーションのシステム科学」ニュースレター Vol.4(2020年4月号)

4年目の活動についてー領域代表からのメッセージ

2019年、令和に元号が代わりました。「生物移動情報学」領域は第2期公募班を迎えて新たなステージに入りました。生物の移動に関するさまざまな情報の取得と分析に関して、大きく進歩しています。

平成31年度(令和元年度)公募18班は、その課題設定に広がりを感じるだけでなく、連携の厚みが期待できます。6月22日、23日の領域会議@仙台では各課題の口頭発表、ポスター発表に加えて、「連携ツール」の共有を行いました。これまでに発表した論文の概要と連携できる研究テーマを冊子にまとめ、配布しました。アドバイザーの荒井先生、小田先生、合原先生にはお忙しい中ご出席いただき、すべての発表を聞いていただきました。激励のコメントをいただき、感謝しています。

さらに、9月25日、26日には若手合宿@蒲郡を行い、ポスター発表とグループワーク、共同研究相談会を実施しました。その他にも7/26には、木村(B02神経科学)と中井(A01制御工学)によって、Neuro2019(新潟・朱鷺メッセ)におけるシンポジウム「データ駆動型/モデル駆動型神経科学研究の幕開け」が開催されました。朝一番かつ他にも多数のシンポジウムが開催されており、発表者4人のうち2人は神経科学とは関係ないデータ科学分野からの発表(A02の竹内と前川)であったにも関わらず、100名程度の聴衆によって会場はほぼ満員となり、データ駆動型かつ汎用的な動物行動の解析手法の構築を目指す当領域に対する関心の高さが、改めて明らかになりました。

計測、分析、理解、検証のループをまわし、モデルを精緻化することが本領域の目標ですが、いくつかの対象に関しては数回まわすことができました。ログボットの改良は順調に進んでおり、スタート時には想像できなかった形状に進化し、想定していた機能をつぎつぎに搭載しています。また、線虫・ショウジョウバエ・ラット・コウモリ・ウミドリに共通に使える軌道解析手法を論文発表できたことは、ひとつの夢の実現であります。メンバー全員に感謝します。楽しんで研究しましょう。

領域会議

令和元年6月6日(土)と7日(日)に,東北大学片平さくらホールにて,本領域の領域会議が開催されました.2日間にわたり計画班と公募班合わせて,27件の口頭発表と58件のポスター発表が行われました.濃密なスケジュールで進められ,ポスター発表では時間を過ぎても討論が止まらず,本領域の熱さが感じられました.

今年度の領域会議は,各分野が連携を深め上手くかみ合うようになってきた印象を受けました.開発した機器を使えないか,このデータを何かに使えないかといった相互の提案が随所で見られました.依田先生(名古屋大学)から共同研究が簡単には進まない理由の1つとして,生態学側と工学側の理解・コミュニケーション不足が挙げられていました.私自身,工学側としてフィールドワークに参加させていただいた際には,現地の理解が甘く,実験をうまく進めることができないことがありました.しかし,回数を重ねることでノウハウが溜まり,今では実地を意識した開発ができるようになりました.本領域も,立ち上げから3年が経過し,領域会議等を通して行われた共同研究や意見交換によって,互いへの理解が深まり,領域全体の活性化に繋がり始めたのだと思います.

一方で,領域代表の橋本先生(東北大学)からは,「Transformative」な研究を行い,世界的な成果を目指してほしいというお言葉がありました.他の人と繋がり,その力を自分の研究に活かすことで,今までの研究手法とは異なる進め方をしてほしいということでした.今回の領域会議での交流をみると,今までにない新たな研究手法の誕生が期待できそうです.会議の最後には,アドバイザーの小田先生(名古屋大学)からも世界トップレベルの成果と言えるのではないかとのお言葉もいただけました.個人的には,アドバイザーの荒井先生(京都大学)から我々が取り組んでいるクジラ用ローバーへの言及があり,嬉しかったと同時に,その期待に身が引き締まる思いがしました.領域全体の成長を感じ,今後の世界的な成果を予感させる会議でした.

2019年6月領域会議報告 西田遼(東北大学情報科学研究科)@A01制御橋本研

2019年6月22日と23日に,東北大学にて領域会議が開催されました.2017年の東北大学,2018年の名古屋工業大学での開催に引き続き3回目の開催となりました.口頭で27件,ポスターで60件の発表があり,100人以上が参加しました.

今年の領域会議では,例年に比べて,共同研究による成果が多く報告されました.例えば,他の鳥に襲いかかって他の鳥が取った魚を奪う映像の撮影成功は,制御班が開発したロギングデバイス「ログボット」とデータ科学班が開発した機械学習手法,生態学班のフィールドワーク力の組合せが生んだ成果です.他にも逆強化学習による海鳥の軌跡の欠損部分の補完や,コウモリの検出など共同研究の成果報告が行われました.またこれからの共同研究のアイデアの紹介も行われました.

今後も共同研究を行っていくことが推進されます.私自身もA02データ科学班の大西先生(産総研)のもとで歩行者の移動のモデル化をテーマとして研究させて頂きました.大規模な人流データを用いた研究や,そのデータを得るための計測実験参加,いつもいる大学とは異なった環境下での研究活動という貴重な経験をさせて頂きました.またそこでも新たなつながりが生まれ,現在の研究に活きています.依田先生(名古屋大学)からも共同研究を勧める発表がありました.その発表のなかで,共同研究により創造を超えた研究ができたこと,そのためにはコミュニケーションが必要であることを挙げていました.ポスター発表では,予定の時間を超えて活発に議論,コミュニケーションを行う様子が見られました.

「共同研究により今までの科学,工学を変えるようなTransformative な研究を行い,世界的な研究成果を出すこと」を目的地として,どのような経路を辿って共同研究を行っていくかを考える機会となった領域会議だったのではないでしょうか.

参加報告:生態学会

2019年3月15-19日にかけて神戸の国際会議場にて開催された第66回日本生態学会大会に参加し、ポスター発表を行いました。開催された会場である神戸ポートランドの周辺では、同時にいくつかの催し物(コンサート、大学の卒業式、ペットフリーマーケット等)が行われており、我々学会員と大変込み合っていました。また、この学会ではあらゆる生態学分野の方が参加しており、口頭発表、ポスター発表の他にも18題のシンポジウムや、32題もの自由集会が行われました。

その内の一つとして、本領域から「生物移動に対する新たな挑戦Systems Science of Bio-navigation」のシンポジウム発表がありました。B01班から依田先生、飛龍先生、B02班から、高橋先生、小川先生、A02班から前川先生の5名による講演が続き、生態学の研究者の方々の中で、生態学分野の他にも、神経科学分野、データ化学分野、と幅広い発表が続きました。また発表の中で、本領域での革新的なデバイスである「ログボット」による研究や、神経科学、生態学、情報学、工学などの異分野連携により発展していく新しい生態学の話もされました。講演中や講演後にも行動生態学分野以外の参加者の方々からもいろいろな角度から質疑応答が盛んに行われていたのが印象的で、時間一杯まで様々な意見交換がなされていました。

今回の生態学会では、行動生態学分野や、それ以外にも数理モデル分野や、生態系分野、社会環境学分野など様々な分野の方々の話もありました。それらの講演を聞いた中でも、本領域は非常に興味深い結果を輩出しながらも、まだまだ未開拓の領域も多く、かなりの発展性を残しているように感じられました。今後もさらに異分野連携が進んでいく事で、行動生態学分野だけではなく、生態学分野全体をも牽引していくような領域に発展していくのではないかと、今からとても楽しみに感じられるシンポジウムでした。

BiRD2019開催報告

大阪大学大学院情報科学研究科 前川卓也

2019年3月11日に、IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications(PerCom2019)のワークショップとして、International Workshop on Behavior analysis and Recognition for knowledge Discovery (BiRD 2019)を京都国際会議場にて開催しました。ワークショップチェアは玉木徹先生(A02)、依田憲先生(B01)と私が就任し、領域内の多くの先生方にもTPCメンバーとして参加していただきました。本ワークショップは、情報分野の人間行動認識研究がどのように生態や神経科学研究に貢献できるかを主題としており、従来のオーラルによる発表に加え、生態学研究者らによるポスターセッション、情報と生態、神経科学の共同開発に関するディスカッションセッションなどを行いました。ワークショップの参加者は約30名であり、情報技術の動物行動理解研究への適用に関して活発な議論が行われました。

大阪大学大学院情報科学研究科 中谷友哉(M2)

2019年3月11-15日にかけて京都にある国立京都国際会館にて開催されたPerCom 2019のInternational Workshop on Behavior analysis and Recognition for knowledge Discovery (BiRD 2019)に参加し,口頭発表を行いました.

今回参加させていただいたBiRD 2019はPerCom 2019のWorkshopとして開催され,国内外の幅広い分野の研究者が人間,動物,自動車などの様々な情報源から収集された行動データの認識や理解に関する研究に対して発表や議論を行いました.本Workshopでは,Keynoteに加えて,6件の口頭発表と8件のポスター発表がありました.様々なWorkshopが開催されていた中で,本Workshopには多くの研究者が訪れ,活発な議論が行われました.

私はVision and trajectoryのセッションで一人称のビデオを用いた行動認識に関する研究についての発表を行いました.英語での口頭発表の難しさを感じましたが,自身の研究を国内外の幅広い分野の研究者に聞いていただくことは,有意義な経験になりました.特に情報系の会議で生物学や神経科学の研究者がいる中で発表することは,不思議な気持ちにもなりましたが,自身の研究がより幅広い分野に貢献できることを考えると大きな喜びがあり,モチベーションの向上にも繋がりました.また,自身の発表だけではなく,異分野融合の研究に触れることで,自身の研究に対する見方が変わったように感じました.特に生物分野の研究者が生物の行動を解析するために行動認識の技術を用いていた研究からは,人を前提としていた自身の研究のより大きな可能性を感じられました.

Workshopの最後には,ポスター発表を含めて異分野同士の研究者で議論が行われ,様々な視点からの意見交換がなされました.このような活発な議論はこれからの本領域のさらなる発展を感じさせるもので,私自身も多くの知見を得ることができました.本Workshopは,新学術領域の盛り上がりを感じさせるものであり,これからのさらなる発展を期待させる会議でした.

竹村

平成31年3月11日(月)から15日(金)にかけて,国立京都国際会館にて,本領域開催のBiRDworkshop2019 (Behavior analysis and Recognition for knowledge Discovery) が行われました.第17回国際シンポジウムPerCom(IEEE International Conference on Pervasive Computing and Communications)に併設されたワークショップです.PerComは,ユビキタス領域に関わるコンピュータサイエンスのトップ会議です.その中でBiRDは,様々な分野の研究で使用されている多様な行動データの解析や問題点を共有,議論する目的で開催されました.

ワークショップでは,基調講演から始まり,情報工学技術を用いた行動分析手法についての講演が行われました.またポスター発表では,生物の行動データや現在使用している解析における問題点などが議論されました.情報工学の視点からの本領域での成果について発表,ディスカッションが行われ,大変価値のあるワークショップであったと思います.

私もポスターセッションに参加,発表させていただきました.私は情報学と生態学の境界で研究をしています.しばらく悩んでいた問題があったのですが.普段関わることのない情報の専門家の方から,解析手法や使用データについて大変貴重なご意見を伺うことができました.一つのデータについて様々な解析方法のアイデアを得ることができ,大変貴重な経験となりました.また,同研究室の先輩鈴木宏和さんと同期の小山偲歩さんがBest Student Poster Awardに選ばれており,改めて尊敬の意を感じたとともに,私も負けていられない!と鼓舞されました.

最後に,このような貴重な会を開催してくださり,参加させていただき,本当に感謝の気持ちで一杯です.ありがとうございました.発表を通して成長することができました.また,力不足も実感したため,より多くの方の意見も取り入れて,研究に邁進していこうと思います.このような素晴らしい会が今後も開催されることを願います.

ちょっと長めの話をする・聞く会@長崎 参加報告

木村響(長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科 海洋フィールド生命科学専攻)

2019年11月11日から2019年11月12日にかけて「ちょっと長めの話をする・聞く会@長崎」が長崎大学水産学部で開催されました。今回は小規模で、スカイプでの参加も含めて約20名の方々が参加され、10件の口頭発表がありました。

2019年は領域会議や若手合宿などにも参加させていただきました。生態学から神経学、工学、データ科学についての研究、それらを融合させた研究についての発表が行われるという普通の学会との異色感に面白さと未知のものに遭遇している期待感を感じました。そして、今回の研究会はそのような研究発表を長めに詳しく聞くことができるということで非常に楽しみにしていました。

生物移動情報学は知識駆動型モデルとデータ駆動型モデル、つまり、リアルな動物の行動とサイバーによるシミュレーションが相互にフィードバックしながら生物の移動を解明していくことを目指す領域であると理解していました。しかし、ディープラーニングなどのコンピュータ技術から生物の行動の意味をどうやって理解していくのかわかりませんでした。しかし、今回の研究会ではNathan et al. (2008)で提示されている枠組みがリアルとサイバーの橋渡しの具体的な方法として示されていました。また、発表の中でその枠組みの活用法が具体的示されていました。今まで、リアルとサイバーが結びついたら革命的なことが起きそうだけれどもイメージできないという感じだったのが、今回の研究会の発表を聞くことで、何か凄いことが現実になりつつあるのを感じました。

領域会議や若手合宿に比べれば、かなり小規模でした。しかし、短い時間が短い領域会議などに比べればじっくり話を聞くことができ、質問もし易く非常に有意義な研究会でした。

Nathan, R., W. M. Getz, E. Revilla, M. Holyoak, R. Kadmon, D. Saltz & P. E. Smouse (2008) A movement ecology paradigm for unifying organismal movement research. Proceedings of the National Academy of Sciences, 105, 19052.

海外派遣報告書

木村響「2つの視覚刺激に対する逃避行動:逃避行動中に魚類の行動は変化するのか?」2020年1月25日~2020年2月4日

2020年1月26日から31日までアメリカ・カリフォルニアで開催された「Gordon Research Conference: Predator-Prey Interactions」に参加してきました。この学会では生物の捕食被食に焦点を当てています。私は魚類を中心に捕食行動、逃避行動の研究をしていますが、日本では捕食被食に関する研究に触れられる機会が少ないため、この学会は非常に有意義な学会でした。

捕食被食に関連して捕食者との遭遇や寄生、化学シグナルなど様々な発表が行われていました。どの発表も興味深いものばかリでした。普段、瞬間的な時空間スケールが小さい逃避行動を観察している私としては、こうしたテーマは時空間的にスケールが大きくとても新鮮に感じました。逃避行動はシグナルなどでの捕食者とのやり取り、捕食者との遭遇など様々な前段階を経て起きる行動なので、これらの発表は近眼的になっている私にインスピレーションを与えてくれるものでした。

この学会で、私は魚類の逃避方向に関する研究成果をポスター形式で発表しました。内容は次の通りです。適切な方向に逃げることは捕食者などの脅威を避けるために重要ですが、先行研究では単独の捕食者に対する逃避方向のみが調べられてきました。しかし、実際には集団で狩りをする捕食者が存在したりするため、逃げるためには状況に応じて適切な行動を選択する必要があります。先行研究では適切な逃避方向を選択するために感覚によるフィードバックで方向が調節されることを仮説として示されています。しかし、これを実証した研究例は存在しませんでした。そこで魚類のカジカを2方向から映像刺激で挟み撃ちしたときに、1方向の時と比べて逃避方向が変化するのか検証しました。その結果、予想通り2方向から挟み撃ちされた場合、逃避方向が変化していました。また、2つ目の刺激が来るタイミングをずらしたときの結果から、初めの刺激の処理が神経内で行われているときに、2つ目の刺激が来ると逃避方向が変化していることが分かりました。つまり、逃避開始時の刺激に応じて逃避方向が変化することが明らかになりました。

会場では多くの方にこの発表を聞いていただきました。また、すべての方が捕食被食に関係する研究をしているので、今後、論文として仕上げていく上で非常に有意義な意見をもらうことができました。捕食被食の研究者の方々と交流できたことで今後の研究につながる新たなアイデアも生まれそうです。今後も機会があればこうした学会に参加したいと思います。

松本朱加 2019年6月20日~2019年6月24日

私は海外派遣支援制度に採択していただき、2019年6/20~6/24にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で行われた22nd International worm meetingに参加しました。この学会は線虫の国際学会の中では最大の規模のもので分野も多岐にわたります。私はNeurobiology – Behaviorのセッションでポスター発表を行いました。

私が取り組んでいるテーマについて簡単にご説明します。線虫は餌とともに経験した塩濃度に誘引される塩走性学習行動を示します。線虫が目的の塩濃度に到達するための行動戦略の1つとして、濃度勾配の方向を感知しカーブを調節する風見鶏機構というものが知られています。私は、この風見鶏機構を実現するために神経回路内で塩濃度の情報と運動の情報が処理されているメカニズムの解明を目的として研究に取り組んでいます。

風見鶏機構はただ好ましい方向に向かってカーブしているだけの単純な機構のように見えますが、塩濃度を感知するための受容器が鼻先の1か所にしか存在しない線虫にとってそれほど容易なものではないと考えられます。受容器が2か所以上あれば体の周りの濃度勾配の方向の感知は静止している状態でも可能ですが、1か所にしか存在しない場合勾配の方向を直接感知することは不可能です。線虫は首を振りながら前進するため、自分がどのように動いているのかという運動の情報と、そのとき感じた塩濃度の情報から勾配の方向を感知していると考えられます。風見鶏機構の面白さは、線虫が単純な神経系で情報を適切に処理し、濃度勾配の方向を感知し運動を調節している点にあると思います。

私は感覚の情報と運動の情報がどのように神経回路内を流れているのかを解明するために神経のカルシウムイメージングを行っています。線虫は体が透明であるため、生きたまま神経活動を測定することが可能です。

風見鶏機構を制御していると考えられている線虫頭部の神経細胞に着目し、線虫が前進している際の首振りの周期(約4秒)で変化する塩濃度刺激を与えました。麻酔など薬剤を用いて線虫の動きを止めるかわりに、微小流路内で物理的に動きを制限した状態で、蛍光顕微鏡を用いて神経活動を観察しました。接近している神経は高速共焦点顕微鏡を用いて同時に3次元的に観察し、互いに区別しながら定量しました。

塩濃度刺激を受容するASER感覚神経とその下流にあるAIZ介在神経は塩濃度変化にはっきりと応答することがわかりましたが、AIZの下流にあるSMB運動神経は塩濃度変化に対して目に見えるようなはっきりとした応答を示しませんでした。また、先行研究によりSMB神経は首の動きを制御していることが示唆されていたのですが、実際にSMB神経の活動の上昇と首の動きが相関していることがわかりました。

また、塩濃度変化に対するAIZ介在神経の応答の強さ(振幅)は微小流路内の線虫の前後の動きと相関して変化するため、AIZ神経は自身の動きや状態によって感覚情報の受容を調節しているのではないかと考えました。

以上の結果をまとめポスター発表に臨んだところ、様々な質問やコメントを頂くことができました。とくに、線虫の動きをかなり制限した状態でイメージングを行ったため、流路内の線虫のわずかな前後の動きはプレート上の前進と後退に対応していないのではないかというコメントを頂きました。また、線虫が首を振ることができない状態で塩刺激を与えていた点について、首振りが神経の塩濃度変化の受容に与える影響や行動の状態に与える影響を観察できないのではないかといったコメントも頂き、線虫が自由に動くことができる状態で塩刺激を与えてイメージングする必要性を感じました。

厳しいコメントが多かったのですが、高速共焦点顕微鏡を用いたことで、これまで定量化が困難だった神経のイメージングに取り組んだことは評価して頂くことができました。AIZ神経が動きと感覚の情報の処理を行っているということにも興味を持って頂き、AIZ神経に関する先行研究を交えたディスカッションを行うことができました。

International worm meetingは実験・解析ともに発表が充実しており、行動や神経活動の観察に関する話題も多くありました。自由走行中のイメージングに関しては、オーラルセッションで自由行動中の線虫の全脳イメージングを行っているグループの話がありました。そのグループでは麻酔した線虫の神経活動と自由行動中の神経活動を比較し、麻酔されると全神経の活動パターンが単純になるとのデータを出しており、行動を制御する神経活動の解明における行動中のイメージングの必要性や、多くのラボの関心がそこに向かっていることを感じました。この学会に参加することで最新の研究に触れることができ、非常に貴重な経験をさせて頂けたと思います。